AIエージェント

Claude Codeを使う士業は要注意:日本語フォルダ名で顧客のメモリーが混ざる

1. メモリーが混ざっている気がした

私は毎日、Claude Code というAIエージェントを使って仕事をしています。Claude Code には、作業の内容を覚えておく「メモリー」という機能があります。フォルダごとに覚えてくれるので、次に開いたときに一から説明し直さずに済みます。とても便利です。

ある日、違和感がありました。このフォルダでは話していないはずのことを、AIが知っている。別のフォルダで覚えたことが、混ざっている気がしたのです。

2. 「問題ないか」と聞いたら「ない」と言われた

まず、AIに聞きました。このフォルダの作り方で、何か問題はないか。答えは「問題ありません」でした。

それでも、違和感は消えません。そこで聞き方を変えました。「メモリーが混ざっている気がする。原因を究明しろ」。するとAIは、保存先のフォルダを調べ始め、しばらくして原因を報告してきました。さっきは「ない」と言ったのに、です。

3. 原因は、日本語のフォルダ名

Claude Code は、メモリーと会話の記録を、パソコンの中の決まった場所に保存します。保存先の名前は、作業しているフォルダの場所(パス)から作られます。このとき、英数字以外の文字は、すべて「-」に置き換えられます。日本語も例外ではありません。

私の環境では、こうなっていました。

  • 作業フォルダ:…/Documents/ObsidianAI連携
  • 保存先の名前:…-Documents-ObsidianAI--

「連携」の2文字が、「--」になっています。ということは、同じ場所に「ObsidianAI顧客」というフォルダを作っても、保存先は同じ ObsidianAI-- です。日本語の部分が違っても、文字数が同じなら区別がつきません。

これは私の環境だけの話ではありません。Claude Code の公式ドキュメントには、保存先の名前は「作業フォルダのパスのうち、英数字以外の文字を - に置き換えたもの」と書かれています(Manage sessions - Claude Code Docs)。開発元の GitHub にも、日本語・中国語・韓国語のフォルダ名で別のプロジェクトのメモリーが混ざった、という報告が複数寄せられています。2026年10月時点で、まだ修正されていません(#70076、#93960)。

顧客ごとにフォルダを分けている方は、もっと危険です。「顧客/山田商事」と「顧客/鈴木建設」は、どちらも同じ保存先になります。AIは、山田商事の事情を覚えたまま、鈴木建設の書類を作るかもしれません。

4. 士業にとっては大問題

これが趣味のフォルダなら、少し不便なだけで済みます。士業は違います。

私たちには、法律で守秘義務が課されています。

行政書士法 第12条(秘密を守る義務) 行政書士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱つた事項について知り得た秘密を漏らしてはならない。行政書士でなくなつた後も、また同様とする。

社会保険労務士法 第21条(秘密を守る義務) 開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員は、正当な理由がなくて、その業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、又は盗用してはならない。開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員でなくなつた後においても、また同様とする。

出典:e-Gov法令検索(行政書士法/社会保険労務士法)

たとえば、「パンダ工業」の件を調べているのに、AIが「めだか興産」の情報を混ぜて答えてくる。どちらも日本語で5文字なので、AIには区別がつきません。しかも、AIはそれをもっともらしい文章にまとめてきます。気づかずに顧客へ送ってしまったら、えらいことです。(社名は架空です)

メモリーが混ざっただけで、すぐに情報が外へ出るわけではありません。しかし、A社の事情を前提にしたB社向けの書類を見落として出せば、A社の秘密をB社や役所に見せることになりかねません。知らなかったは言い訳になりません。

5. 解決法は、フォルダ名を英語にするだけ

対策は拍子抜けするほど簡単です。

  1. 作業フォルダの名前を英数字だけにする。最後のフォルダだけでなく、途中のフォルダも含めます。たとえば「顧客/山田商事」なら「clients/YamadaShoji」です。ハイフンなどの記号も使わないほうが安心です。記号はすべて「-」に置き換わるので、「yamada-shoji」と「yamada_shoji」は同じ保存先になります。区切りの「/」も「-」になるため、「clients/yamada-shoji」と「clients-yamada/shoji」も区別されません。単語の区切りは、大文字で示しましょう。ただし、Mac は大文字と小文字を区別しないのが標準なので、大文字・小文字の違いだけで別の顧客を見分けるのはやめておきましょう。
  2. すでに混ざった記録を整理する。フォルダ名を変えても、古い保存先の記録は残ります。中身を確認してから、整理してください。
  3. 作業を始めるときに、「このフォルダのメモリーには何が入っている?」とAIに聞く。別件の話が出てきたら、混ざっている合図です。

5分で終わります。ただ、知らなければ、手の打ちようがありません。

6. AIの「大丈夫」は保証ではない

今回いちばん考えさせられたのは、AIの答え方です。

AIは、自分の内部の仕組みをいつも把握しているわけではありません。「問題ないか」と漠然と聞けば、一般論で「ない」と答えます。「混ざっている気がする」と症状を示し、原因を調べろと頼めば、実際のファイルを見て答えにたどり着きます。違うのは、AIの性能ではなく、聞き方でした。

そして、聞き方を変えるきっかけは、私の違和感でした。AIに「大丈夫」と言われて、そこで止まっていたら、今も気づいていなかったと思います。

7. 楽な道はない。でも、守る方法はある

AIに限らず、新しい道具には落とし穴があります。それを避けるには、三つしかないと思っています。

先生の知恵を借りること。仲間と情報を共有すること。自分でも感度を上げること。

AIは、これからの士業の道具です。うまく使えば、仕事は確実に速くなります。ただ、使いこなすには、自分を守る知恵も一緒に身につける必要があります。楽なことはどこにもありません。それでも、知っていれば5分で防げることがあります。この記事が、その5分になればうれしいです。

同じようにAIを使っている士業の方、気づいたことがあれば、ぜひ教えてください。こうして共有することが、いちばんの対策だと思います。

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