
1. カフェでパソコンを開く行政書士
開業しました。 いい気になってコワーキングスペースなんかで仕事をしている振りをしながら、次の研修までの時間つぶしをしたりしています。 そんなとき、私はカフェのWi-Fiを使わないようにしています。
楽天モバイルでテザリングしています。 Wi-Fiの方が早いかもしれません。 しかし、行政書士がVPNを使わずにカフェのWi-Fiへ接続して業務を行うことは許されません。 気分やマナーの問題ではなく、明確な善管注意義務違反だからです。
2. ソクラテス以来の演繹法で証明する
古代ギリシャの哲学者ソクラテス以来、論理的な証明には演繹法(三段論法)が使われてきました。 大前提と小前提が正しければ、導き出される結論は絶対に覆りません。 MCPを使って国の法令とセキュリティ機関の一次情報を引き出し、三段論法で組み立ててみます。
大前提として、法律は行政書士に厳格な注意義務を課しています。
行政書士法 第12条(秘密を守る義務) 行政書士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱つた事項について知り得た秘密を漏らしてはならない。行政書士でなくなつた後も、また同様とする。
民法 第644条(受任者の注意義務) 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
小前提として、カフェの公衆Wi-Fiは通信内容が第三者に盗聴される構造的な危険があります。
情報処理推進機構(IPA)情報セキュリティ指針 公衆無線LANの電波は誰もが傍受可能であり、悪意ある第三者による通信内容の盗聴及び重要情報の窃取の脅威が存在する。業務上の機密情報を取り扱う通信においては、安全性を確認できない公衆無線LANを利用してはならない。 出典:IPA テクニカルウォッチ「公衆無線LAN利用に係る脅威と対策」
この警告が発せられたのは2016年、今から10年前のことです。 この10年で攻撃側の武器だけが劇的に進化し、公衆Wi-Fiの無防備さは据え置きのまま。リスクは当時よりはるかに跳ね上がっています。 通信が保護されていない公衆Wi-FiにVPNなしで接続する行為は、依頼者から預かった秘密情報を無防備な電波の海へ流すことと同義です。
結論はひとつしかありません。 公的機関が危険性を公に警告している環境を、防護措置なしに使う行為は、法的な過失そのものです。 したがって、行政書士がVPNなしでカフェWi-Fiを使って業務を行うことは、善管注意義務違反を構成します。 使ってはいけないというのは努力目標ではなく、論理的にも法的にも絶対に逃れられない鉄則です。
コラム:カフェWi-Fiの本当のヤバさ
これまで被害に遭ったことがないから平気だ、と言う人がいます。 しかし、それは安全だったからではなく、単に気づいていないだけです。
10年前のIPA警告から、攻撃側の武器は恐ろしいほど進歩しました。 今や数千円から数万円で買える手のひらサイズの攻撃端末が存在します。 リュックやポケットに忍ばせておくだけで、周囲のパソコンを自動で偽の電波へ引き込み、通信を丸裸にできます。 かつては専門知識が必要だった偽のログイン画面や傍受スクリプトも、今やAIを使えば誰でも数分で作れてしまいます。
さらに恐ろしいのは、現代の攻撃者は派手な悪さをしない点です。 画面をロックすることもなく、その場では何事もなくネットを使わせます。 裏でパスワードや認証情報だけを静かに盗み取り、本人は快適に作業を終えて店を出ます。 数ヶ月後に海外から不正アクセスされて顧客情報が漏洩しても、あの日のカフェWi-Fiが原因だったと気づける人はいません。
攻撃方法が普及し、盗んだ情報をお金に換える方法も確立されている。そんな時代に、自分を守れるのは自分の判断だけです。 事故が起きても原因の特定すらできない回線のリスクは、士業として許容できないと思います。大事に巻き込まれて、最初の被害者になる前に、対策を取りましょう。